目的と目標の違い
「目的」と「目標」は似ているようでいて、その役割は全く異なります。
例えばスポーツにおいて、「目標」が「試合に勝つこと」だとすれば、「目的」は「スポーツを通じた人間形成」や「社会に貢献できる人材の育成」であるはずです。
これを英語のフレームワークで考えるとより明快になります。
•目的=WHY(なぜやるのか)
•目標=WHAT(何を達成するのか)
•計画=HOW(どうやって行うのか)
「目的(WHY)」があり、それを具体化した「目標(WHAT)」があり、その先に「計画(HOW)」が存在します。
目標を達成するための計画は、状況に応じて柔軟に変えてもよいでしょう。しかし、どの計画が最適かを判断する際には、自分自身や組織の「目的・信念」と照らし合わせ、吟味する必要があります。そうでなければ、流行や合理性、あるいは目先の「結果」だけに囚われ、本当に大切な「目的(なぜそれをするのか?)」を見失ってしまうからです。
ラグビー日本代表の意思決定
ラグビー日本代表の活躍からは、学ぶべきことがたくさんあります。その一つは「目標設定がいかに大事であるか」、そして「目的・目標・計画」が明確であることの強さです。
ラグビー日本代表の目的は、「歴史を変える」「愛するラグビーを人々に愛されるスポーツにする」ことでした。
それまでは世界から「日本人にはラグビーは無理だ」「日本は100年たっても、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、イングランドの世界4強には勝てない」というレッテルを貼られていました。当時のヘッドコーチ、エディー・ジョーンズ氏はこう言いました。「君たち日本代表は、なんのために存在するのか。世界中が日本人はラグビーができない、ラグビーは無理だと思っている。その価値観を変えるために君たちが存在するんだ」。つまり、「日本人にもラグビーができることを証明する」ということを、明確な目的に据えたのです。
その目的の下、チームは1日5回のハードな練習を、年間で通算173日も続けました。とんでもなくハードだったんですけど、キツいときに誰かが「歴史を変えるのは誰なんだ!」と叫ぶと、みんなが「俺たちだ!」と応えて自らを奮い立たせたといいます。明確な目的が、この「世界一のハードワーク」を支えたのです。
エディー氏は「歴史を変える」という目的を達成するために、「ワールドカップのベスト8入り」という高い目標を設定しました。
その4年後、チームはジェイミー・ジョセフ氏の体制へと移行しましたが、選手たちの間で「目的」はしっかりと共有され続けていました。
目的(WHY)は「歴史を変える」
目標(WHAT)は「W杯8強入り」
ジェイミーHCの考えた計画(HOW)は
・日本の文化を知る
・日本の選手を知る
・相手よりも準備する
・スクラム、ラインアウトのセットプレーを重視
・個々の成長
・ハードな練習とハードな試合
・徹底的にフィジカルを鍛える
・スーパーラグビー参戦でキツイ環境を経験
そして、チームの合言葉、スローガンは「ONE TEAM」でした。
【日本代表の目標の9マス】
2015年のW杯、南アフリカ戦で、世界を驚かせたあの逆転劇を思い出してください。「引き分けを狙うか、逆転勝利を狙うか」という究極の選択を迫られた場面です。
ピッチの上で、選手たちはハドルを組んで声を掛け合いました。
「歴史変えるの誰だよ!」
「俺たちだよ!」
「引き分けじゃ歴史は変わらねえよ!」
「よし、じゃあスクラムだ。トライして勝つ!」
チームで目的と目標が明確だったからこそ、あの土壇場で迷いなく、最高のパフォーマンスを発揮できたのです。そして、彼らはついに自分たちの手で、目標を達成しました。
バスケの名将トム・ホーバスの目標設定
スポーツの例ばかりで申し訳ありませんが、2021年の東京五輪でバスケットボール女子日本代表を見事銀メダルに導いたトム・ホーバス氏は、目標設定について次のように語っています。
「すぐに達成できてしまうような、低く簡単な目標はNG」「目標を大きく持たなければ、何事も成し得ない」「目標は現実的であり、きちんと力を発揮すれば達成できる位置に定める」。
トム・ホーバス氏は、その後男子代表チームの監督に就任し、2023年のW杯で見事アジア一位となり、五輪への自力出場を決めました。それまで誰も成し遂げられなかった高い目標を、彼は「目的」を見失わずに掲げ、一つひとつ達成していったのです。
