京都へ行った時に、ある茶室で掛け軸を見つけました。
お茶を頂きながら、その空間を楽しむ。畳や木の温もり、掛け軸、襖の向こう側に広がる日本庭園。心地よく耳に入ってくる自然の音色、竹の音、抹茶を点てる音。全ては外界から来たお客様のため、この瞬間を最高にもてなす徹底した空間作りがなされていました。
中国から仏教と共に伝わった掛け軸は、「掛けて排する」ことに用いられ、はじめは拝む対象だったそうです。室町時代以降、貴族や有力武士が茶室に掛軸を飾り、鑑賞しながらお茶を楽しむようになりました。この頃から掛け軸の人気が出て、拝む対象からお客様のことを考えて楽しむアートとしての役割を担うことになりました。お客様の地位やその時の季節、時間などを配慮して飾る掛け軸を選び、どのような空間であるのを演出するようになったそうです。
「一期一会」
路地ヘ入ルヨリ出ヅルマデ、
一期ニ一度ノ会ノヤウニ、
亭主ヲ敬ヒ畏ベシ
山上宗二「山上宗二記」より。千利休の言葉として記載。茶会に臨む際には、その機会は二度と繰り返されることのない、一生に一度の出会いであるということを心得て、亭主・客ともに互いに誠意を尽くす心構えを意味。
お客様のことを考えて、たった一度の機会に対して素晴らしい空間を作り上げる。その一つの要素に、視覚的アートとしての掛け軸の存在はとても大きかったことは容易に想像ができます。その場にいる人皆が満足できる空間を、歴史と共に作り上げてきた日本の文化は品があり綺麗なものだなと感じます。
その掛け軸からインスピレーションを得て、長方形に一つ一つ花の手刺繍を施しコートに落とし込みました。着ている人、その姿を観る人も楽しめる。また、壁に掛けてもその場を満たす掛け軸の様な作品に仕上げました。
花は自然界で生き抜くために形や色を長年に渡って変化させ、独自の個性を放っています。また、そこから生き抜いた結果の証という強さと、上品な美しさを感じとることができます。
心を動かされる掛け軸と花の組み合わせ、それを落とし込んだコートの後ろ姿に誰かの心が満たされることを祈って。
佐野舞華
mäisa代表
佐野 舞華
さの まいか
2021年に東京でファッションブランドmäisaを立ち上げる。mäisaのブランドコンセプトは「Embracce your uniqueness」。ありのままの自分と向き合い、自分の個性をあたためて生きて行くという思いが込められている。自分を大切にしながら前向きに生きる女性に寄り添ったブランド作りをしている。
[ 公式サイト ]
https://maisa.official.ec/