2020年9月9日、製造原価も考えず、販売価格も、売先も、売り方も決まっていない、自分が使いたい、欲しい、”こだわり”の詰まった手帳『M365』が完成しました。モックアップを持ち込んでから、ほぼ一年かかりました。表紙の質感、ロゴの箔押し、見たことのないページング、それは納得のいく素晴らしい手帳でした。製品というより作品でした。自分が良いと思う手帳は、売れる手帳とは違いました。このようなプロジェクトの進め方は、机の上でさんざん学んだはずなのに、自分のこととなると違いました。
結局初年度は、友人知人のみなさんが買ってはくれたものの、作った手帳の3分2、7ケースが売れ残りました。手帳は日付が入っているので、売れ残ると廃棄するしかありません。わたしは、その手帳をなかなか廃棄することができませんでした。現状を受け入れることができなかったのだと思います。
2年経ってやっと、売れ残った手帳を誰も見られないように車に積んで、処分場まで行き、台車に積んで廃棄口まで持っていくことができました。そのときの気持ちは今でも忘れません。もったいないことをしてしまった申し訳ない気持ちと、売り切ることができなかった情けない気持ち、大切なモノやコトを捨てているような悲しい気持ちになり、二度とこんなことはしないと心に誓いました。
中島正雄