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道具に宿る思想

ビジネスパーソンの仕事の道具といえば、今の時代はやはりスマートフォン(スマホ)でしょうか。

スマホがあれば、ポケットに収まるし、鞄も不要。
ノートも、パソコンも、ペンも必要ない。
電子マネーも使えるから、カードケースも財布もいらない。
腕時計すら不要かもしれません。

スマホは、まるで魔法の道具のようで、たしかに便利。
でも、私からすると、
どこか味気なくて、ちょっと、つまらない。

スマホは、新しいほど性能が良く、使いやすい。
その一方で、古くなったスマホは、あっという間に「使えないもの」になってしまう。
果たして、そんなスマホを“道具”と呼べるのだろうか?
私は、ふとそう思ってしまいます。

最近は、昭和の時代の価値観が揶揄されることも多いですが、
私もその昭和世代のひとり。

かつてのビジネスパーソンの道具といえば、
手帳、名刺入れ、ノート、ペン、そして鞄でした。

お客さまとの打ち合わせの場では、
まず鞄からノートとペンケースを静かに机の上に置き、
相手の目を見て、しっかり話を聞き、必要なことをメモしたものです。

今でも、そんな営業マンに出会うと、
「この人、できるな」と思い、安心して仕事を任せたくなります。

そして、わたしはつい、その人がどんなペンを使っているのかを見てしまう。

企業のノベルティやイベントで配られた安価なペンや、
透明な軸の軽そうなボールペンを見ると、
さっきまで高まっていた信頼が、少しトーンダウンしてしまう。

かといって、高級ブランドのペンなら良い、というわけでもありません。

大事なのは、その人の身の丈に合った道具であること。
そこに、気持ちや仕事への姿勢がにじみ出ていれば、それはきっと相手にも伝わります。

たとえば、モンブランやペリカン、ラミーといったペンを使っている人を見ると、
「ああ、この人は仕事に真剣だな」「自分に投資しているな」と感じて、
こちらの気分も自然と上がってくるのです。

保険の契約(何千万と支払うことになる契約)や、車の購入契約など、
そんな大きな意思決定のサインを、プラスチックのボールペンで書いてくださいと言われたら、どう感じるでしょうか?

名刺入れにしても、鞄にしても、手帳しても、同じです。
そこに思いが込められているかどうか。

もちろん、スマホでなんでも済ませてしまうのもアリです。
でも、逆の立場になったとき、スマホで適当に扱われているように感じたことはないでしょうか?

道具というものは、使えば使うほど、その人の手に馴染み、
その人の雰囲気と一体化してオーラを放つようになります。

そして、
古くても、大切に使い続けていることが伝わる道具には、美しさがあります。
そこには、持ち主との物語が感じられるのです。

道具を大切にしている人は、仕事も、お客さまのことも、そして自分のこともきっと大切にしているはず。

「仕事ができれば、何を使ってもいい」
私は、そうは思いません。

こだわりを持って、目の前のお客様のことを丁寧に考える。
その姿勢は、きっと道具にもあらわれる。

道具は、大事な仕事の相棒です。

(中島正雄)

M9notesが多くの人の相棒になったらいいなーと思っています。