タダからの手紙

わたしが、長坂是之(ただゆき)さんから頂いた本は、ちょうどわたしが生まれたころ、25歳の長坂さんがヒッチハイクで1964年から2年間かけて、ヨーロッパ→アフリカ→アジアの40カ国を旅したノンフィクションでした。わたしは、その本を8ヶ月もかけて読みました。わたしはものすごく感動して、感想というか、感動をコラムに書きたところ、長坂さんからメールをいただきました。長坂さんは道中、タダと呼ばれていました。タダからの手紙です。

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お忙しい中、拙著を丁寧に読んで頂き素敵な感想をありがとうございます。
楽しく読んで頂いて嬉しいです。

ヒッチハイクの旅先で私が感激したデキゴトを一つひとつ丁寧にアップして頂きありがとうございます。

四国遍路の途中で私との出会いは、
石手寺の近くの実家でした。

プロローグの文章は、
二〇一九年八月、長い夏の日が落ちかかった夕暮れ時、菅笠をかぶり、杖を持ったお遍路姿の男性が、四国遍路にいた。

「一人の日本人の消息を探しています」

「昔、ナイル河をカヌーでイタリア人と旅をした人をご存じないでしょうか」

ケニアで報道写真家として活動する千葉康由さんが、イタリアの友人に頼まれて、四国遍路の途中、私を捜していたのだ。そして、四国遍路五十一番札所「石手寺」に近い一軒の家の門の前に立った。

「『二人のナイルの旅を記録したスライド』を預かって来ています」

私は、一九六四年から二年間の放浪の旅の道中、たまたま出会ったイタリア人のグラウコウと二人でナイル河をカヌーで下った。

日本へ帰った後、手紙のやりとりをしていたが、ある日、送った手紙が戻ってきた。彼との音信が途絶え、その後も、手紙が届くことはなかった。

二十年、お互いにもうこの世にいないものと思っていた。

しかし、ケニアで同じ写真家として仕事をしているグラウコウの息子さんが、千葉さんの、四国遍路を知り、「父の友人の消息を探して欲しい」と依頼した。

となっています。出版の時の校正原稿です。

グラウコウの消息を届けてくれた千葉廉由さんは、この時は知らなかったのですが、世界で活躍する報道写真家で2019年の世界報道写真大賞を受賞されました。

千葉さんが預かっていたのは、『二人のナイルの旅を記録したスライド』です。

千葉さんは、若い時に朝日新聞の松山支局に勤務していました。グラウコウとの連絡が途絶えた以前の私の住所を歩き遍路の途中、訪ね歩いて、石手寺の近くの実家を訪ねて来られました。そこに住んでいた妹からの電話で千葉さんと会うことが出来ました。             
千葉さんが預って来たスライドは、グラウコウが作成しました。

色々ありがとうございます。

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時空を超えた旅。
こんなことがあるのです。
旅は情け。人間万歳!

今日も、「M9notes」に来てくれてありがとうございます。
長坂是之さんの本『ヒッチハイクとアルバイトで40ヵ国の旅 一九六四年に僕が見た世界』(文芸社)です。
いつか長坂さんに東京で講演をしてもらいたいと強く思っています。
9マスに書いたことは実現します。
長坂さん、また書いてください。

中島正雄