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[飯箸泰宏先生の、M9notesと知能のいい話] 最終話:格子細胞とM9notesの親し過ぎる関係

図15 M9notesの9つのマス目と格子細胞との関係

一般社団法人協創型情報空間研究所
事務局長 飯箸泰宏

さて、M9notesの9つのマス目に言葉(単語類、1語または2語連結など)を配置すると、脳内では、それぞれの言葉が格子細胞に割り当てられることになります。

格子細胞は、次の図のように正三角形がたくさん並ぶように描いた格子縞の交点に脳細胞が位置するかのようになっています。

では、M9notesの9つのマス目はどこにプロットしたらよいのでしょうか。マス目に書かれた言葉(単語類、一語または二語連結など)自体は側頭葉の記憶領域に配置されているはずですが、それらがそれぞれ下記のような格子縞の交点に紐づけられることによって位置関係が脳内に出来上がるのです。

ところで、格子縞は斜めになっているので、直交する位置にマス目の内容をそのままでは紐づけられないですね。どうしましょう・・・。

図14 格子細胞が構成する格子模様は60度の傾きを持つ
図14.格子細胞が構成する格子模様は60度の傾きを持つ

では、こうしましょう!

下図のような位置の細胞にそれぞれ9つのマス目の言葉(単語類、一語または二語連結程度)を紐づけすれば、位置関係を大きく損なわすに配置できます。この配置が最もコンパクトな直交する9つの細胞の選び方になります。縦横の比率が若干違いますが、相対関係か損なわれなければ基本的な認知能力には大きな問題が生じないと考えられます。

図15.M9notesの9つのマス目と格子細胞との関係
図15.M9notesの9つのマス目と格子細胞との関係

これをじっと見ていると、あくまでも仮説ではありますが、配置されている9つの細胞と細胞の間やその周囲には、多くの空白の交点があり、そこには「何かお役に立てることはないですか」と役目を待つ脳細胞が待機しているではありませんか。

M9notesが直交する9つのマス目を採用したことは、この意味で大変良かったのではないかと考えられます。

上図のような9つの細胞が選ばれるとそのそばにいる選ばれなかった細胞や周囲の細胞は、「何か私にも!」と要求するのではないでしょうか。

畏友中島正雄氏は、曼荼羅の図柄にヒントを得てこの9つのマス目を考案したのだそうですが、正方形を3×3に並べて9つのマス目を作ったことには知能学(脳科学など)に照らしても、大きな意味があるのかもしれません。

図16.東寺 両界曼荼羅図(写真提供 便利堂)/M9notesセミナーテキストより
図16.東寺 両界曼荼羅図(写真提供 便利堂)/M9notesセミナーテキストより
図17 前図の部分拡大図=9つのマス目に仏が配置されている/M9notesセミナーテキストより
図17.前図の部分拡大図=9つのマス目に仏が配置されている/M9notesセミナーテキストより

これ以上言うと、言いすぎかもしれませんので、断言しませんが、M9notesに何か書き始めると引き寄せられるように項目間の概念やアイディアが呼び起こされ、また周囲に関連する言葉が想起されるようになる秘密はここにあるのではないかと思わざるをえません。

言い過ぎで、ほめすぎになっているかもしれませんが、M9notesは一つの空想的な仮説としてすき間の細胞の創発力を利用しているのだと思えるのです。

M9notesは面白いです。お使いになるのも面白いですが、研究対象としても面白いと思います。

素晴らしい知的な道具を開発した 畏友 中島正雄氏とM9notesに、皆さまからの温かい応援をなにとぞ、よろしくお願いいたします。

終わり

一般社団法人協創型情報空間研究所事務局長

飯箸 泰宏

いいはし やすひろ

1946年(昭和21)生まれ 。現役のシステム系講師。都立足立高校でビートたけしと同級。東京大学理学部化学科卒。同情報科学科研究生修了。1981年に株式会社サイエンスハウスを起業し、同時に教壇にも立つようになった。以来会社経営では37年、慶応大学、法政大学、明治大学等のシステム系教員としては38年の経歴を持つ。教え子は8000人を超える。精神障がい者の支援ボランティアにも従事してきた。専門は情報科学で、人工知能、移動体制御などでの実績がある。最近は、脳科学、心理学、哲学を束ねる「知能学」の創出を悲願にしている。

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[飯箸泰宏先生の、M9notesと知能のいい話] 第5話:場所細胞、格子細胞、M9notes

図10 場所細胞の発火の様子(‶場所細胞″ 日本神経科学学会. 最終更新2014.10.08.

一般社団法人協創型情報空間研究所
事務局長 飯箸泰宏

最近の脳科学の成果の一つに、場所細胞、格子細胞の発見があります。この発見に貢献した脳科学分野の研究者3名は、2014年のノーベル賞 生理学・医学賞 を受賞しています。

特定の場所に自分がいるときに脳内(海馬の中)の特定の細胞が興奮し、別の意味のある場所に移動すると海馬の中の別の細胞が興奮します。この細胞たちを場所細胞と言います。場所細胞は生命体が重要だと思う場所で発火する性質があり、おおむね一次元的な並びを示します。

「川沿いに歩くとこの辺りにエサがあるはず」「森のふちを歩いてゆくとこの辺りで熊に出会う」「道なりに進むと右手にケーキ屋さんがある」などの行動に便利なようになっているようです。しかし平面座標上のどのあたりにあるのかについては、ほぼ情報をもっていません。

図10.場所細胞の発火の様子(‶場所細胞″ 日本神経科学学会. 最終更新2014.10.08.
図10.場所細胞の発火の様子(‶場所細胞″ 日本神経科学学会. 最終更新2014.10.08.
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E5%A0%B4%E6%89%80%E7%B4%B0%E8%83%9E

これらの場所細胞とは別に、海馬に隣接する嗅内皮質(および前海馬支脚、傍海馬支脚)に「格子細胞」というものがあり、この「場所細胞」と連動していることが分かりました。

図11.場所細胞と格子細胞 ‶Place cell(場所細胞)とGrid cell(格子細胞)-2014年ノーベル生理学・医学賞を解説する″ 理化学研究所.
図11.場所細胞と格子細胞 ‶Place cell(場所細胞)とGrid cell(格子細胞)-2014年ノーベル生理学・医学賞を解説する″ 理化学研究所.
http://bsi.riken.jp/jp/youth/place-cell_and_grid-cell.html

格子細胞は、細胞を線で結べば正六角形(または正三角形)が描けるように配置されていて、平面状の位置関係を表しているのです。

図12.格子細胞の概念図(〝脳の中で、自分が今どこにいるのかを把握し 海馬でマップを作成する複数の空間把握細胞の発見″
図12.格子細胞の概念図(〝脳の中で、自分が今どこにいるのかを把握し 海馬でマップを作成する複数の空間把握細胞の発見″
https://www.nikkyoko.net/common/download/2014/medical2014.pdf

空間認識のための脳の機能には、ほかにもあることが次々と発見されていて、例えば、「頭方位細胞(頭が東西南北のどちらを向いているかを保持する細胞)」や「境界へベクトル細胞(壁際、崖っぷちなどの限界の位置を記憶しておく細胞)」があります。

これらは、どれもヒトを含む哺乳類すべての「前言語認知能力」の一部を構成するものであることに注意していただきたいと思います。

実は、脳内には様々な周波数とリズムをもった電気的な波動が行き交っていますが、海馬にはこれらの空間認識細胞とともに「時間細胞」があって、波動の位相差を利用して時間を把握するという離れ業も行っていることが分かっています。

ダンスや歌などの「前言語的活動」がヒトをワクワクさせる理由が何となくわかりますよね。

図13.空間認知のための細胞の数々〝脳の中で、自分が今どこにいるのかを把握し 海馬でマップを作成する複数の空間把握細胞の発見″
図13.空間認知のための細胞の数々〝脳の中で、自分が今どこにいるのかを把握し 海馬でマップを作成する複数の空間把握細胞の発見″
https://www.nikkyoko.net/common/download/2014/medical2014.pdf

一般社団法人協創型情報空間研究所事務局長

飯箸 泰宏

いいはし やすひろ

1946年(昭和21)生まれ 。現役のシステム系講師。都立足立高校でビートたけしと同級。東京大学理学部化学科卒。同情報科学科研究生修了。1981年に株式会社サイエンスハウスを起業し、同時に教壇にも立つようになった。以来会社経営では37年、慶応大学、法政大学、明治大学等のシステム系教員としては38年の経歴を持つ。教え子は8000人を超える。精神障がい者の支援ボランティアにも従事してきた。専門は情報科学で、人工知能、移動体制御などでの実績がある。最近は、脳科学、心理学、哲学を束ねる「知能学」の創出を悲願にしている。

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[飯箸泰宏先生の、M9notesと知能のいい話] 第4話:前言語認知機能

図9 M9notesの前言語能力誘発の仕組み

一般社団法人協創型情報空間研究所
事務局長 飯箸泰宏

ヒトは、多くの場合、言葉で考えると言われています。しかし、果たしてそれだけでしようかというのが私の考えです。人間の祖先と考えられる霊長目が地上に現れたのは1億年前から7千万年前くらいです。そこから派生した人類が言語を持つようになったのはいつごろでしょうか。諸説は入り乱れていて、5万年前だという人もいますが、20万年前だという人もいます。私は、もう少し古くて70万年前くらいだろうと考えています。

このころ人は血縁を基にした群れで生活していましたが、いくつかの群れが集まって村を作る者たちが現れていました(ムレからムラへ)。村を作る者たちこそホモサピエンス・ホモサピエンス(現生人類)で、ホモサピエンス・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)と別れを告げた人々だろうと思います。村を作るためには人々が密接なコミュニケーションをとる必要がありました。言葉なくして村はできなかったのではないかと私は思います。

図7.“遺跡トピックスNo.0267-復元された縄文時代の家-”山梨県.最終更新2017.05.08.
図7.“遺跡トピックスNo.0267-復元された縄文時代の家-”山梨県.最終更新2017.05.08.
https://www.pref.yamanashi.jp/maizou-bnk/topics/201-300/0267.html

いずれにしても、ヒトは文脈がある言葉(言語)を持つ前から石器を作り、槍や投石機などの狩りの道具を作って操り、チームを組んで狩りをしていました。事物に対する高い認知能力を持ち、計画を立案し、実行する力がありました。言葉(言語)による思考の前に、ヒトの思考は生き生きと存在していて、その能力の上に70万年前ころから言葉(言語)による認知が追加され成長していったのだと考えるのが自然な考えではないでしょうか。

言語(言語)が発達する以前の我々の祖先たちの認知能力を「前言語認知機能(前言語認知能力)」と呼んでよいと私は思います※(注)。ここでは認知能力と合わせて建造的知識構成能力(計画能力)なども含めて、「前言語能力」という言葉も使います。

※(注)前言語認知機能(前言語認知能力)について
この能力を以前は「右脳の能力」と呼んでいたことがありますが、最近は右脳・左脳の区別とは無関係であることが分かっています。最近では、「非認知能力」という言葉を使う人が増えています。しかし、前言語認知能力も「認知能力」の一種ですから、これを「非認知能力」と呼ぶのは自己矛盾です。したがって私は「前言語認知機能(前言語認知能力)」という言葉を推奨します。

ヒトの一生は生物史を早送りにして繰り返すと言います。最初の受精卵は単細胞生命のようですが、やがて胎内で成長すると魚のような形態をし、続いて爬虫類に似た形態を経て次第に大きくなり、母体から誕生するころには類人猿のような外見をしています。

赤ん坊は、最初から言葉をしゃべるわけではありません。まずは、オギャーと生まれて、とりあえずはオシッコ、ウンチ、オッパイという言葉がないので、どれでも区別なく泣き声で訴えます。やがて母親の顔と他の者の顔を見分けたり、音のする方向を理解したりするようになります。盛んに言葉を覚えようとする6か月目ごろからは、右に父親がいて左には母親がいるということも分かるようになり、その後しばらくすると上や下という位置関係も理解するようになります。言葉は一語または二語連結程度で不完全ですが、色や形、位置関係や数などは早くから理解して、そのあとで言葉がついてゆくようになります。

「子どもの言語獲得過程は,前言語期を経て,初めて意味のあることばを発する一語発話から,二語文,多語文へと発達する」(中川佳子. ことばの生涯発達心理学. 昭和学士会誌. 第75巻・第2号, p.184-190(2015))

このように、発達心理学でいう前言語期はほんの一瞬であるかのように言われていますが、前言語能力はその後も大いに発揮されていて、女子で10歳、男子で12歳くらいまでの一通り言葉を覚えるまでの期間は、その都度、「前言語→言語への転換」を手探りで図りながら言葉を覚えていると考えられます。

もっと言うならば、その後の大人であっても、新しい概念に遭遇したり、知らない現実に直面したりすれば、色や形、音、触感、味、その時受けた感情の動きなどを頼りに、ありのままの物事を理解しようとして、まずは、絵にしたり、擬音で再現したり、身振り手振り、叫びや悲鳴、唸り声などで理解しようとします。

それらをそのまま他者に伝えればノンバーバルコミュニケーション(非言語コミュニケーション)になります。これらの前言語理解を通じて脳内で言語へと転換することに成功すれば言語表現になるのではないでしょうか。言語化に失敗すれば「感覚的にこんなもの」という感覚記憶として認識されることになるはずです。前言語能力が先、言語能力は後、前言語能力の土台があってこその言語能力、前言語能力あっての言語能力と考えられます。その逆は第一義的にはあり得ないのです。

大人は、言葉(単語類、1語または2語連結など)の数々をすでに知っています。しかし、知識・知能は単なる言葉のサラダ(統合失調症などでみられる思考障害の一。単語の一つ一つは正しいが、それぞれがつながりをもたずに発話される状態のこと)ではありません。関連する多数の概念をネットワーク化してさらにはピラミッド型の階層構造をもつ構造体にまで構成しなければなりません。

この知識の構造体(ネットワークと階層構造の二重構造)は作っては壊される賽の河原(さいのかわら)の石積みのようなもので、何度も壊しては積みなおされていくものです。まだ知らない何かを理解するためには、言葉を覚えた後の子供たちや大人たちは関連する概念と紐づけられた言葉を引き出して、その言葉同士をさらに関連付けることで知識構造体を創り上げる機会が多くなります。

図8.恐山の賽の河原の石積み(akio9jp. “賽の河原 石積み” トリップアドバイザ日本.
図8.恐山の賽の河原の石積み(akio9jp. “賽の河原 石積み” トリップアドバイザ日本.
https://www.tripadvisor.jp/LocationPhotoDirectLink-g1059452-d1385249-i198237278-Mt_Osore_Sai_no_Kawara-Mutsu_Aomori_Prefecture_Tohoku.html

下から積み上げる賽の河原の石積みように関連する言葉を集めて、下から上へ概念構造体が作られていく場合もありますが、その逆に、中心になりそうな概念を拾い出すところから始まる場合もあります。

あれこれと試行錯誤して組み立てている最中に最初に拾い上げた概念が真の中心でないことに気づけば、最初の概念は捨てられて、新しい概念が中心になります。概念は言葉(=単語類=1語単独、または2語セット程度)に紐づけられ、言葉をつなぐことで概念が結びついてゆきます。言葉は概念操作の道具だからです。

さて、この概念を操作するのは、文法に従う言語(内包と外延だけではなく文脈を持つ文で構成される言葉の集まり)でしょうか。言語はシーケンス(一次元体)です。しかし、作ろうとしている概念は恐山の賽の河原の石積みのようなピラミッド型の構造体(多次元体)です。いったんできた構造体(多次元体)をシーケンス(一次元体)に写す(写像を作る)ことは比較的容易ですが、その逆は人間にとって大変難しいのです。

むしろ、文法にとらわれずに賽の河原の石積みを絵にかき取った方がはるかに知的で自然です。石積みの石の替わりに文法を取り外した言葉(単語類)を積み上げるのがM9notesなのです。

図9.M9notesの前言語能力誘発の仕組み
図9.M9notesの前言語能力誘発の仕組み

M9notesが促すように、中心的な概念を示す言葉を紙に書き、その言葉の周囲に関連する概念(を示す言葉)を書いてゆくことは極めて自然な行為であり、その行為は文法以前のいわば前言語能力を駆使した行為になっています。また、逆向きにもやもやと関連が予想される言葉を周囲に集めてから中心の概念を探すことにも使えます。この場合ももちろん前言語能力を駆使した行為になっています。

ヒトは、前言語能力を駆使してこそ、より良い言語能力を発揮できるのです。

前言語認知機能(前言語認知能力)

この能力を以前は「右脳の能力」と呼んでいたことがありますが、最近は右脳・左脳の区別とは無関係であることが分かっています。最近では、「非認知能力」という言葉を使う人が増えています。しかし、前言語認知能力も「認知能力」の一種ですから、これを「非認知能力」と呼ぶのは自己矛盾です。言語能力以外の認知能力はないという迷信もあるようです。
「非言語認知能力」という言葉もありますが、一部の脳科学者が激しく攻撃しています。「言語を扱う脳の各器官を除去したら認知機能がほとんど失われる。だから、非言語認知能力なんていうものはないのだ」という理由です。ここにも、言語能力以外の認知能力はないという迷信があるようです。
しかし、言葉を持つ以前の類人類やホモサピエンス(旧石器時代の)も認知能力はあったとしか考えられません。そもそもれらの認知能力を「前言語認知能力(前言語認知機能)」と言っていけないことはないでしょう。かれらが持っていた「前言語認知機能」を担う現代人の脳の各器官を除去したら言語はそもそも成立しないともいえるのです。この批判者の皆さんは脳の発達史を全く理解していないように見えますね。歴史を逆転して理解しているようです。
とはいえ「非」は誤解を生みますから、人類史を想起しやすいように「前」という言葉を私は使うことにしました。「前言語認知機能(前言語認知能力)」という言葉は私の造語で、「右脳の能力」「非認知能力」などの言葉の替わりに使用することを推奨するものです。

言葉のサラダ

WIKIPEDIAをはじめとして、ネット上の解説では、ネットスラングの「ワードサラダ」の解説が多数を占めています。
ネットスラングの「ワードサラダ」は、もともと精神医療の分野で統合失調症の方があらわす症状の一つとして知られていた「言葉のサラダ」からの派生です。ネットスラングの「ワードサラダ」は「文法は一見正しくできているのに意味不明な文章(コンピュータの自動生成文などにありがちな)」を揶揄するものです。
私が使用した「言葉のサラダ」は、本来の統合失調症の方があらわす症状の意味です。「文法」については、ネットスラングの「ワードサラダ」とは真逆です。本来の「言葉のサラダ」は文法もほぼ失われて、単語や2語連接などの言葉が脈絡なく出てくる状態を意味しています。
「goo辞書」が比較的まともな説明を書いています。
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/267411/meaning/m0u/
下記の1が本来の「言葉のサラダ」、2がネットスラングの「ワードサラダ」です。
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1 統合失調症などでみられる思考障害の一。単語の一つ一つは正しいが、それぞれがつながりをもたずに発話される状態のこと。言葉のサラダ。
2 コンピューターで自動生成された、文法的には正しいが、単語の使い方がでたらめなために意味が通らない文章。スパムメールの文面に用いたり、広告を配置したブログに埋め込んでサーチエンジンの利用者を誘導したりする。文法上は正しい構造のため、コンピューターで不審な文章を自動判別するフィルタリングソフトやサーチボットなどでは除外が難しい。
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一般社団法人協創型情報空間研究所事務局長

飯箸 泰宏

いいはし やすひろ

1946年(昭和21)生まれ 。現役のシステム系講師。都立足立高校でビートたけしと同級。東京大学理学部化学科卒。同情報科学科研究生修了。1981年に株式会社サイエンスハウスを起業し、同時に教壇にも立つようになった。以来会社経営では37年、慶応大学、法政大学、明治大学等のシステム系教員としては38年の経歴を持つ。教え子は8000人を超える。精神障がい者の支援ボランティアにも従事してきた。専門は情報科学で、人工知能、移動体制御などでの実績がある。最近は、脳科学、心理学、哲学を束ねる「知能学」の創出を悲願にしている。

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[飯箸泰宏先生の、M9notesと知能のいい話] 第3話:M9notesの知能学

図5 ヒトの概念の構成モデル(by 飯箸)

一般社団法人協創型情報空間研究所
事務局長 飯箸泰宏

まず、人は概念をフラットに対等なものとしてネットワークで結びつける傾向があります。それとは別に具体的概念から抽象的概念を導き出し、その終章概念からさらに高度な中小概念を創り上げるという幾層にも織りなす概念の階層構造も形成します。

抽象的概念―具体的概念という階層構造ばかりではなく、目的とその手段という階層構造も形成されます。完成品とその部材という階層構造も作ることができます。概念の階層構造はピラミッドのように頂点から裾野へと広がります。逆にたどれば、裾野から積み上げて高いいただきが作られているとみることもできます。

図5.ヒトの概念の構成モデル(by 飯箸)
図5.ヒトの概念の構成モデル(by 飯箸)

このピラミッド型の階層構造とネットワークは両方があってヒトらしい柔軟で鋭い思索が進んでゆく(図5参照)のですが、ピラミッド型の階層構造のほうが矛盾や不整合やアンバランスを嫌う面倒な性質を持っています。逆にネットワーク型の知識構造は緩やかで柔軟性に富むので、その形の概念の連結網は比較的早く創り上げられるのに、ピラミッド型の階層構造の構成が遅れて、計画策定や概念整理が滞ることが良く起こります。

おそらく人の知の構成においては、平らなネットワークを基盤にしてピラミッド型の階層構造が構成されるに違いありませんが、その過程で、ヒトは悶々と悩み、階層化に悩むのです。場合によっては階層構造の構成に失敗して挫折してしまうこともあるように思います。

ヒトが直面するこのような状況にこそ、M9notesの出番があります。

まず、トップダウンに対応した知の構成活動を見て見ましょう。トップと思われる言葉(単語類、1語または2語連結程度)の候補を9つのマス目の真ん中に書いてみることから始めます。そのテーマを表す概念に関係する言葉(単語類、1語または2語連結程度、言葉は概念に結びついています)をその周囲に書いていきます。

逆方向のボトムアップに対応した場合の知の構成活動は次のようになります。当面これが中心と断定できるものはないけれど、関連のありそうな概念がもやもやしているとき、もやもやしている概念を表す言葉(単語類、1語または2語連結程度)を9個のマス目の周囲8個に埋めていきます。そんなときは、もやもやする言葉が一つではないでしょうから、思いつくものはどんどん書いていきます。2個3個・・・とマス目が埋まっていくと、おぼろげながら中心になりそうな言葉が浮かびあがったり、ひと眠りしたあと後や数日後に「あっ、これだ」と思いついたりすることがあります。

周辺の言葉と思っていたものが実はド真ん中の言葉だと気づいたりもします。実はよく寝ることはヒトを創造的にするのですが、その話題は別の機会にいたします。いったん中心になる言葉が定まると周りの言葉群を見直したり、新しいページに改めて書いたりすることになります。M9notesはそのあたりは自由に使うことができます。

何をどんな順に書いてもいいが、ひそかに前方に向けた戦略は右に、後方支援に関係するものは左にしようなどと心の中でつぶやくともっとおもしろくなりますが、あまりこだわると行き詰りますので、こだわらない方がいいかもしれません。M9notesの発明者である中島正雄氏は、そのほかにもいろいろな順序や配置法考案していますので、彼のセミナーや製品についてくる解説文を見ると参考になります。

最初の9つのマス目の中心のマス目とその周囲のマス目の1個から8個のマス目のいくつかに関連項目が書けたら、じっとそれを眺めていると面白いことに、関連項目の周囲にまた何か関連するものがあることに気づくようになっています(気づくことが多いのです)。

そのようなときには、関連項目の中の一つを別のページの9個のマス目の真ん中に再び書いてみるとその周囲にそれぞれの関連項目が書けることになります。「最初の9つのマス目の関連項目の周りにも何か関連する項目が浮かんでくる→それをまた別の9つのマス目の中央に書いてその周囲に関連項目を書くことができる」というわけです。

元の9つのマス目の周囲8つのマス目から生まれた新しい9つのマス目を2階層目というと、2階層目の9つのマス目の周囲8マス目のどこかに書かれた関連項目の一つを取り出して、新しい9つのマス目の中央に書けば、3階層目が出来上がります。階層はどこまでも広がっていきます。最初の着想から多段階の階層構造が出来上がっていきます。

図6.中島正雄氏が書いたM9notesの応用例
図6.中島正雄氏が書いたM9notesの応用例

この図6は、よく見ると図5の右半分に書かれたツリー型の階層構造を上から覗いたような形になっていることがわかりますね。みごとな一致です。

関連の深いものを探すという人間にとって比較的容易な知的操作であるネットワーク的な手法を使って、少し面倒であきらめやすい階層構造型の知識構造が比較的容易に出来上がっているのです。

ヒトが大きな構想をめぐらしたり、複雑怪奇な概念群を整理してすっきりさせる際にぶつかる困難をやすやすと乗り越えさせてくれる道具にM9notesはなっているのです。

一般社団法人協創型情報空間研究所事務局長

飯箸 泰宏

いいはし やすひろ

1946年(昭和21)生まれ 。現役のシステム系講師。都立足立高校でビートたけしと同級。東京大学理学部化学科卒。同情報科学科研究生修了。1981年に株式会社サイエンスハウスを起業し、同時に教壇にも立つようになった。以来会社経営では37年、慶応大学、法政大学、明治大学等のシステム系教員としては38年の経歴を持つ。教え子は8000人を超える。精神障がい者の支援ボランティアにも従事してきた。専門は情報科学で、人工知能、移動体制御などでの実績がある。最近は、脳科学、心理学、哲学を束ねる「知能学」の創出を悲願にしている。

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[飯箸泰宏先生の、M9notesと知能のいい話] 第2話:知能学からM9notesへ

図4 「人工知能」は、「人間の知能」をまねて作られる。Arranged by 飯箸

一般社団法人協創型情報空間研究所
事務局長 飯箸泰宏

私の血気盛んな30歳代は、人工知能の第二次ブームのころでした。ミンスキー(Marvin Minsky, 1927年8月9日 – 2016年1月24日)に触発されて人工知能の作成に取り組み、一瞬だけ世界トップに立った経験があります。

今は、人工知能の第三次ブームの最中ですが、行く先は、いつの時代でも同じですが、不透明だとも言えます。実は、あたかも人工知能の国内リーダであるかのようにふるまっている人たちには、ひそかに危ういところを感じています。彼らは、それなりにコンピュータ科学や数学はやってきたかもしれませんが、人の知能についての洞察があまりにも弱いのです。

言うまでもなく、人工知能とは生身のヒトの知能をより良くより強く人工的に再現するものですが、彼らの多くはヒトの知能を知らないばかりか、ヒトの知能を知ることなど必要がないと‶豪語″する輩さえいるしまつなのです。人の知能をバカにするものは、結局、本人の知恵足りずゆえに、人工知能にすら負けてしまうにちがいありません。

図3.たとえば「人工心臓」は、「人間の心臓」をまねて作られる。Arranged by 飯箸
図3.たとえば「人工心臓」は、「人間の心臓」をまねて作られる。Arranged by 飯箸
図4.「人工知能」は、「人間の知能」をまねて作られる。Arranged by 飯箸
図4.「人工知能」は、「人間の知能」をまねて作られる。Arranged by 飯箸

とはいえ、現在は、ヒトの知能が十分に解明されているのかというとそうとは言えません。たとえば、脳の各部分のいくつかについて解剖学的手法で部分的に詳しく解明することに成功している「脳科学」もヒトの知能の全体像を明らかにするためにはまだまだかなり遠い位置にいるというしかありません。

「心理学」は最近でこそ統計的手法を用いることが盛んになりましたが、もともとは文学的手法によって人の知能や感情の全体像をかなり描くことに成功して来たものです。もともとエビデンスに弱くて、科学的な説得力に欠け、また現象は説明できても機作については想像の域を出ることがないので応用も困難でした。さらには、ヒトの「知」については、古来内省的または対話的に解明して来た伝統的な学問として、「哲学」も忘れてはいけないでしょう。

最近の哲学は個人的“偏見”を新しい発見と誤解して論文が書かれることが多く見受けられて信頼できるものが多くありませんが、ヘーゲルまでの哲学は、多くの場合、人の「知」についてのゆるぎない原理原則を抽出して見せてくれています。

私は、現在の学問の発達段階から見て、ヒトの知能をそれぞれの角度から見てきた脳科学、心理学、哲学という3つの分野を統合して「知能学」という学問分野を創出すべきであると提唱しています。人工知能を前に進める立場からは「知能学なくして人工知能なし」と言いたいのです。いずれ、脳科学が知能学を吸収する時代が来るかもしれませんが、それまでの間は「知能学」で行くべきだと思うのです。

さて、私が現在模索している「知能学」の立場からM9notesを見るとこれがなかなか面白いのです。

一般社団法人協創型情報空間研究所事務局長

飯箸 泰宏

いいはし やすひろ

1946年(昭和21)生まれ 。現役のシステム系講師。都立足立高校でビートたけしと同級。東京大学理学部化学科卒。同情報科学科研究生修了。1981年に株式会社サイエンスハウスを起業し、同時に教壇にも立つようになった。以来会社経営では37年、慶応大学、法政大学、明治大学等のシステム系教員としては38年の経歴を持つ。教え子は8000人を超える。精神障がい者の支援ボランティアにも従事してきた。専門は情報科学で、人工知能、移動体制御などでの実績がある。最近は、脳科学、心理学、哲学を束ねる「知能学」の創出を悲願にしている。

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[飯箸泰宏先生の、M9notesと知能のいい話] 第1話:M9notesに触れると創造力が沸いてくる

飯箸 泰宏(いいはし やすひろ)

一般社団法人協創型情報空間研究所
事務局長 飯箸泰宏

畏友中島正雄氏(株式会社コンピュータリブ社長)が中心となって創り上げたM9notesは、たいへんユニークで興味深いものです。

ノートを広げると左側のページには大きな9つのマス目が書いてあり、右のページは理科の実験ノートのようなマス目で埋められています。手帳サイズ、A5サイズ、A4サイズと3つのサイズがありマス目などの基本的な構成は変わりません。

図1.手帳サイズの見開き
図1.手帳サイズの見開き

左ページにある9つのマス目はいずれも正方形なので縦にして使っても横にして使っても全く同じように使うことができます。右側の実験ノートのようなマス目のページは、図形やグラフを手書きするにもメモの文字列を書くにも便利です。

図2.中島正雄氏が書いたM9ノート左ページ
図2.中島正雄氏が書いたM9ノート左ページ

まず、主題が明白な場合は、9つのマス目の中央に主題を書いて、その周囲に関連事項を書いていくことができます。主題を巡る主要な概念が上下左右に対等に位置するので、周辺概念ならば周囲8つのどのマス目に書いてもその周辺概念が偏りなく対等に主題に関係づけられます。

2、3のマス目を埋めて眺めていると空白のマス目に何か書きたくなって書きつけてみるとそれまでは思ってもいなかった新しい何かが生まれてきます。

そればかりではありません。マス目とマス目の間にも何か書きたくなってくる。そんなときは、新しいページを開いて、前ページに湧き上がってきた概念を再度整理して書いてみるといいでしょう。それもまたじっと眺めているとそれまで気づかなかった関連事項が脳裏に浮かんでくるという具合になっていきます。

また、逆に、主題が明白でない場合は、最初、もやもやした周辺事項を周囲の8つのマス目に書いていき、いくつかのマス目が埋まったらど真ん中に来るのは何かが見えてくることがあります。

実は、前者のように中心から書き始めるやり方はトップダウン(演繹的思考)で、後者のように周りから攻める方法はボトムアップ(帰納的思考)になっているのです。トップダウンでもボトムアップでもどちら向きにでも使えるのがM9notesの便利な点なのです。

一般社団法人協創型情報空間研究所事務局長

飯箸 泰宏

いいはし やすひろ

1946年(昭和21)生まれ 。現役のシステム系講師。都立足立高校でビートたけしと同級。東京大学理学部化学科卒。同情報科学科研究生修了。1981年に株式会社サイエンスハウスを起業し、同時に教壇にも立つようになった。以来会社経営では37年、慶応大学、法政大学、明治大学等のシステム系教員としては38年の経歴を持つ。教え子は8000人を超える。精神障がい者の支援ボランティアにも従事してきた。専門は情報科学で、人工知能、移動体制御などでの実績がある。最近は、脳科学、心理学、哲学を束ねる「知能学」の創出を悲願にしている。

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